NHKの悲願だったテレビ番組のインターネットへの常時同時配信実施が14日、総務相に認められた。電波による「公共放送」から、ネットも活用した「公共メディアへの進化」をうたうNHKは、放送と通信の融合時代で先導的役割を務めることになるが、同時に果たさなければならない“公約”がある。新サービス実施の前提だった業務、受信料、ガバナンス(組織統治)の「三位一体改革」の実行だ。
「いつでもどこでも必要な情報やコンテンツを得られる環境を整え、視聴機会を拡大するためには、常時同時配信と見逃し番組配信サービスが不可欠」
NHKの上田良一会長は9日の定例会見で、こう語った。高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムの商用化が目前に迫り、放送と通信の垣根はさらに低くなる。公共“放送”から公共“メディア”への進化を目指すNHKにとって、新サービスは生き残りをかけた必須の取り組みだった。
NHKが常時同時配信に先行して取り組むことには、一定の意義がある。採算性の見えない未知の事業に民放は慎重だが、NHKが知見を蓄えて民放と共有することで、参入のハードルを下げることが期待される。これまで多様な番組を提供してきた民放との二元体制を、うまく放送と通信の融合時代に適応させることは、視聴者の利益にもかなうことだ。
ただ、新サービスを認める前提だった三位一体改革の実施状況は不十分で、総務省から指摘を受けた。また、NHKが際限なく大きくなることを懸念する空気が民放や国民にもある。「われわれがよって立つところは国民・視聴者の信頼だ」(上田会長)と言うのであれば、NHKが公共メディアに進化するため、徹底的な改革実行が欠かせない。(森本昌彦)