アニメ制作会社「京都アニメーション」の放火殺人事件は、多大な犠牲者・被害者を出しただけにとどまらず、京アニ作品やアニメを愛するファンの心も傷つけた。事件直後、作品の“聖地”を訪れたファンらは悲しい気持ちを書き残すこともあったが、最近は前向きなメッセージが目立つという。「時は少しずつですが動き出していると思います」。事件から18日で半年。季節の移ろいとともに少しずつ歩みを進めるファンもいる。
《お別れ会、現場、聖地 来る度に変わっていきます》《事件後1カ月(中略)は今みたいに落ちついては書けませんでした》(昨年11月3日)
《第1スタジオの献花に来て以降の聖地巡礼です。(中略)時は少しずつですが動き出していると思います》(同12月1日)
吹奏楽部を描いた京アニ作品「響け!ユーフォニアム」の舞台となった京都府宇治市。市観光センターには、五線が引かれた音楽ノート(B5判)がファンのための交流ノートとして置かれており、メッセージがぎっしりと書き込まれている。
センターを管理する同市観光協会によると、ノートにしたためられた言葉には、事件から時間がたつにつれ変化が表れてきた。事件直後は祈りや励ましのメッセージが増えていたのが、聖地巡礼をした感想などファンらが交流を楽しむ内容へと戻ってきたという。同協会の兼井茜さん(22)は「11月に開かれたお別れ会が一つの区切りとなった人も多いのではないでしょうか」と話す。
同協会によると、交流ノートは事件後、ファン以外にも書き込む人が増えたこともあり、1冊に200件以上のコメントが書かれることもあった。
一方、「楽しいことを書く交流ノートに悲しいことは書き込みたくない」というファンのため、追悼の気持ちを書き込む専用のノートも設置。こちらには、安否不明だった社員の無事を祈ったり、作品や携わった社員へ感謝したりするメッセージが記され、計4冊にも上った。これらは京アニ側に届けられたという。
宇治では、事件で延期されていた京阪電車と「響け-」のコラボイベントも昨年11月に開始。12月には作品ゆかりの楽曲を演奏する恒例のコンサートも開かれるなど、前を向いていこうという雰囲気が少しずつ出てきているという。
「作品を通じて宇治のことを好きになってくれた人もいる。これからもファンが気軽に訪れることのできる場所としてノートは置き続けたい」と兼井さん。交流ノートにはこれからも、ファンらの愛情がつづられていくことだろう。