▽日本経済の現状と財政政策の基本的な考え方
日本経済は雇用環境の改善や高水準の企業収益などによって内需を中心に緩やかな回復を続けている。一方で、自然災害が相次ぎ、広範囲にわたり甚大な被害が発生した。通商問題をめぐる動向など海外発のリスクに留意する必要がある。
経済対策によって、自然災害からの復旧・復興を加速し、経済の下振れリスクを確実に乗り越え、日本経済の生産性・成長力の強化を通じて民需中心の持続的な経済成長につなげることを目指す。高齢化などで社会保障給付費が大きく増加している中、次世代のためにも財政の持続可能性を今後も維持することが重要。令和7(2025)年度の基礎的財政収支の黒字化と同時に、債務残高対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げを目指す。
▽2年度予算案と税制改正
消費税の増収分を活用し、幼児教育・保育や高等教育の無償化など社会保障の充実に計約1兆6700億円。経済対策のための「臨時・特別の措置」として、キャッシュレス決済のポイント還元や防災・減災など国土強靱(きょうじん)化などに計約1兆7800億円を計上。
新規国債発行額は(第2次)安倍晋三内閣発足以来8年連続で減り、平成24年度当初予算から約11兆6900億円の減額となる。
一般会計総額は約102兆6600億円。税収は過去最高の約63兆5100億円を見込む。
主要経費は、社会保障関係費の実質的な伸びを高齢化による増加分に収める方針を達成。消費税増収分を活用して社会保障の充実を図る。
文教・科学振興費では私立高校授業料の実質無償化を推進。地方財政は地方の一般財源総額を適切に確保しつつ、臨時財政対策債の発行を縮減する。防衛費は安全保障環境の変化に対応するため、中期防衛力整備計画に基づいて防衛力を強化。
農林水産予算では農林水産物・食品の輸出環境整備や高収益作物の生産支援を進める。東日本大震災復興特別会計の総額は約2兆700億円。
財政投融資計画は、高速道路の整備や成田空港滑走路の新設・延伸、日本企業の海外展開支援など総額約13兆2200億円。借換債を含む国債発行総額は約153兆円。
税制改正は投資や賃金引き上げを促すための措置を講じ、全てのひとり親家庭の子供に対する公平な税制を実現する。
▽元年度補正予算案
約4兆4700億円の歳出を追加。補正後の一般会計総額は約104兆6500億円。
▽結び
経済再生と財政健全化の両立を図り、経済の持続的な成長を実現するため、予算案の速やかな賛同をお願いする。