【ワシントン=黒瀬悦成】トランプ米大統領のウクライナ疑惑をめぐる上院の弾劾裁判は21日、本格審理に入る。トランプ氏の弁護団は20日、下院本会議が昨年12月に可決した弾劾訴追決議(起訴状に相当)に対する反論書面を提出し、裁判の即時棄却を求めるなど、同氏の罷免を求める民主党と全面対決する姿勢を鮮明に打ち出した。
弁護団の反論書面は、トランプ氏が「何らの法律違反も犯していない」と断じ、訴追決議が挙げた同氏による「権力乱用」と「議会妨害」は罷免の根拠にはならないと一蹴した。下院での弾劾手続きが「不公正だ」とも批判した。
民主党が主導した下院の弾劾手続きをめぐっては、弾劾の審議を行った情報特別委員会で共和党が申請した証人が出頭を許されなかったほか、司法委員会では共和党が求めた公開公聴会の開催が拒否された。
弾劾裁判の審理は21日、共和党が提案した裁判の進め方に関する決議案を採決する予定だ。
共和党のマコネル上院院内総務が20日明らかにした決議案によると、検察官役の下院民主党議員団とトランプ氏の弁護団は、意見陳述の機会をそれぞれ24時間与えられる。陳述は最長で4日で終わらせるとしている。審理は日曜を除く週6日のペースで行われる。
トランプ氏の弁護団は、早ければ21日にも陪審員役の上院議員に弾劾訴追の棄却を申し立てる可能性がある。ただ、米メディアによると共和党有力議員の間では、裁判で弾劾の不当性を明確に示したい考えから即時棄却には慎重な意見が強いという。
トランプ氏の弁護団は、クリントン元大統領が弾劾訴追される理由となった不倫疑惑の捜査を指揮したケネス・スター元特別検察官や、殺人罪に問われたプロフットボールの元スター選手、O・J・シンプソン氏の裁判で無罪を勝ち取った大物弁護士のアラン・ダーショウィッツ氏らを招き、強力な布陣を敷いた。
また、トランプ政権高官は記者団に「裁判は2週間以上は続かないだろう」と述べ、トランプ氏が一般教書演説を行う2月4日の前に裁判を幕引きさせたい考えを明らかにした。
当のトランプ氏は20日、ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)に出席するためスイスに向け出発した。政権高官によると、同が弾劾裁判が開かれる中で会議に出席したのは、裁判を意に介さず職務を遂行する姿を誇示する狙いがあるとしている。