白内障や慢性甲状腺炎を発症した被爆者が国に原爆症の認定を求めた3件の訴訟の上告審弁論が21日、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)で開かれ、結審した。判決は2月25日。経過観察のための通院などが原爆症の認定要件となる「現在も医療が必要な状態(要医療性)」の解釈が争点となっており、2審広島、福岡、名古屋各高裁の判断が分かれていた。原爆症認定に必要な判断の在り方について、最高裁が統一的な判断を示す可能性がある。
3件の訴訟の原告は広島と長崎で被爆した3人。被爆者援護法に基づき国が認定する原爆症は、症状が被爆に起因し、医療が必要な状態と認められることが要件。平成30年2月の広島高裁判決は、白内障の女性(75)について、放射線への感受性の高い生後間もない時期に被爆した点から起因性を認め、要件を満たすと判断。同年3月の名古屋高裁も、長崎市で被爆した慢性甲状腺炎の女性(83)について、請求を棄却した1審判決を変更し、要件を満たすとした。
これに対し昨年4月の福岡高裁判決は、長崎で被爆し白内障を発症した女性(82)について、悪化の可能性が高いといった特段の事情が認められない限り、治療行為を伴わない経過観察では、要件を満たさないと判断していた。