1100万都市を異例の封鎖 新型肺炎、武漢はゴーストタウンに





新型肺炎の影響で、人けのない中国・武漢市内=25日(共同)
その他の写真を見る(1/2枚)

 【北京=三塚聖平】新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が止まらないなか、各地では観光地の営業が停止され、「震源地」の湖北省武漢市では事実上の封鎖措置が続き、「ゴーストタウン」(香港紙)の様相を呈しているという。北京でも故宮=旧紫禁城(しきんじょう)=が休館するなど、中国は異例の静けさの中で25日の春節(旧正月)を迎えた。

 人口約1100万人の武漢では、飛行機などの公共交通機関が全面停止され、繁華街でも人の姿がほとんど見えないという。

 習近平指導部としては果断な措置をとることで、初期対応の遅れを挽回するつもりとみられるが、住民に過重な負担を強いる措置であることから不満が高まる恐れもある。

 武漢での公共交通機関の停止は23日、新型肺炎の感染拡大を防ぐため始まった。中国メディアによると「建国以来初」の措置といい、武漢を出入りする飛行機や列車を止め、バスや地下鉄など市内の公共交通機関も営業停止した。各地では高速道路の入り口が閉鎖され、警察官が並ぶ料金所前でUターンをして市内に戻る自動車があふれた。

 「ショッピングモールやレストランも人けがない。道路もラッシュの時間帯ですら空いていて、まるでゴーストタウンだ」

 武漢住民は、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストに語った。例年なら春節の書き入れ時だが、多くの商店や飲食店が休業しているという。市当局は25日、市中心部では許可を受けた車両以外の通行を26日から禁じると発表した。

 封鎖は武漢の周辺にも拡大。湖北省内の黄岡(こうこう)など12市も24日までに、武漢と同様の措置をとった。感染拡大が続くなかで、中国当局はなりふり構わず範囲を広げて強硬措置をとる。

 封鎖対象地域では不安が増しているとみられ、武漢では市民による「買いだめ」で食料品や医療品が品薄になっていると伝えられる。大勢の人が押し寄せている病院では、病床が足りていないと指摘される。

 共産党機関紙、人民日報は25日、武漢で新型肺炎患者の専門病院の新設工事が進行中だと報じた。2月3日までに完成予定という突貫作業で、ベッド数1千床になると伝えられる。25日にはこれとは別に1300床の病院を半月以内に建設すると報じられた。

 また、人民解放軍は各地から計450人の医療チームを武漢に派遣。各地の医療関係者も相次いで武漢入りしている。SNSや官製メディア報道では、「武漢頑張れ!」という応援メッセージがあふれているが、当の武漢住民らの不満は事態が長期化すればさらに高まることが避けられないとみられる。

 封鎖措置について、北京の医療関係者は「人道的には問題があるが、感染拡大阻止の面では効果がある」と期待を示す。一方でサウスチャイナ紙は「予防策としてはすでに遅すぎるかもしれない」という伝染病専門家の見方を伝える。

 また、武漢は主力産業である自動車を中心に日本など外資系企業が多数進出しているが、武漢に拠点を持つ日系メーカー幹部は「今後の状況がまったく読めない」と困惑の表情を浮かべる。事態が長引けば経済への影響も広がるとみられ、習指導部にとって封鎖措置は副作用が大きい劇薬になる可能性がある。



Source link