欧州連合(EU)で地球温暖化対策をめぐり、原子力を石炭など化石燃料に代わるエネルギーと認めるか否かが議論となっている。加盟国は野心的な温室効果ガス削減目標でほぼ足並みをそろえるが、発電過程で温室効果ガスを排出しない原発については立場が割れる。世界の温暖化対策の牽引(けんいん)役であるEUによる議論だけに、行方が注目される。(元ベルリン支局長 宮下日出男)
■割れるEU加盟国
EUは昨年12月の首脳会議で、ポーランドを除く27カ国が温室効果ガス排出を「2050年までに実質ゼロ」とする目標で合意した。ポーランドは温室効果ガス排出の多い石炭への依存度が高く、転換のための財政支援の拡充が必要として留保した。
議論はポーランドへの対応だけでなく、原発の取り扱いでも難航した。
EUでは原発を利用する加盟国と、利用しない国が半分ずつを占める。利用国のうち、チェコとハンガリーが原発を温室効果ガス排出の削減手段として明確に位置付けるよう主張する一方、原発を使わないオーストリアやルクセンブルク、22年の「脱原発」を目指すドイツなどが反対した。
最終的には原発大国のフランスがチェコなどを後押しし、首脳会議の総括文書には、一部の国が目標達成のため原発を活用することが明記された。チェコのバビシュ首相は「原発が(実質ゼロへの)われわれの手段だと首脳らを説得した」と“勝利宣言”。マクロン仏大統領は「一夜で全てを再生可能エネルギーに替えられないのは明白だ」と強調した。