ふるさと納税をめぐり、総務省が新制度から大阪府泉佐野市を除外したのは違法だとして、市が決定の取り消しを求めた訴訟の判決が30日、大阪高裁で言い渡される。当時は違法ではなかった「過去の寄付募集の実績」をもとに、特定の自治体を除外した同省の裁量は適法なのか。司法は国と地方の分権のあり方にどう言及するのか。判決を前に、異例の法廷闘争の論点と背景を整理した。(杉侑里香、牛島要平)
■「地方自治後退」訴え
「制度への復帰だけが目的ではない。総務相の判断は、日本の地方自治を後退させるものだ」。昨年11月の第1回口頭弁論で、泉佐野市の千代松大耕(ひろやす)市長はこう訴えた。
平成20年に始まったふるさと納税制度。故郷など居住地以外の自治体への寄付に対する税制優遇として創設されたが、やがて特産品などを贈ることで寄付集めを図る動きが定着し、返礼品競争が加速した。
その中で「100億円還元キャンペーン」などと銘打ち、存在感を示した泉佐野市。返礼品に加えてアマゾンギフト券を贈る独自策で30年度、全国の寄付総額の約1割を占める497億円を集めた。
総務省は返礼品を寄付額の3割以下とすることなどを繰り返し通知し、昨年6月には返礼品基準を守る自治体だけが参加できる新制度に移行。同省は泉佐野市を含め、過去に多額の寄付を集めた4自治体を対象外とした。
■双方の対立鮮明
地方自治法は、法令の根拠なく国が自治体に不利益な取り扱いをすることを禁じている。泉佐野市は、新制度の導入前の国の通知はあくまで法的拘束力のない「技術的助言」にすぎず、「従わないことで除外という不利益を与えたことは明らかに法的正当性を欠く」と主張。国の裁量権の乱用だと訴える。