ふるさと納税制度をめぐる異例の法廷闘争は国側に軍配が上がった。大阪府泉佐野市側の訴えを全面的に退け、総務省の新制度を適法とした30日の大阪高裁判決。「受け入れがたい」。敗訴した泉佐野市側に衝撃が広がった一方、同省幹部は「負けるわけにはいかなかった」と胸をなでおろした。ただ、争いの場は最高裁に移る見通しで、長期化の様相も呈している。
「請求を棄却する」。30日午前、高裁の法廷で佐村浩之裁判長が短い主文を言い渡した。注目を集める大型裁判で行われることの多い判決理由の要旨読み上げもなかった。
午後2時から始まった泉佐野市の記者会見。「主張を認めてもらえると考えていた。受け入れがたい」。千代松大耕(ひろやす)市長は悔しさをにじませながらも、「この判決が全てではない」と主張し、改めて最高裁の判断を仰ぎたいとの意向を強調した。
総務相の広い裁量権を認めたこの日の高裁判決は、アマゾンのギフト券を返礼品に上乗せするなどして多額の寄付を集めた市の手法を「極めて不適切」と指弾した。これに対し千代松市長は「市民サービスの向上、地場産業の振興に向けてふるさと納税に取り組んできた」と説明。「何もやらずに寄付金ばかり集めていたわけでは決してない」と不快感を示した。同席した顧問弁護士は「(判決は)白紙委任を認めたようなもの。違和感、おかしいと感じる部分がいくつもある」とこぼした。
対する総務省内では「安心した」「ようやく落ち着いて仕事に取り組める」と喜びの声が上がった。
厳しい判決も予想されていただけに、泉佐野市の請求棄却の一報に、ふるさと納税を担当する自治税務局内ではどよめきが起きたという。「ほっとした」と話すのは同局の担当者。判決については「新制度の根幹部分が認められ、安心できる勝ち方となった」との受け止めもあった。
総務省相手に訴訟を起こした泉佐野市について「やり過ぎた」とある幹部。「国としてのメンツがあり、負けるわけにはいかなかった」との本音も漏れた。