大阪医科大学(大阪府高槻市)の男性元講師(52)=再生医療安全性確保法違反容疑で逮捕、処分保留で釈放=が在職中の昨年春、再生医療に使う脂肪幹細胞を無許可施設で培養した事件で、元講師が「人に投与した場合の安全性、効果、副作用をこの目で確認したかった」と供述していることが31日、大阪府警への取材で分かった。
府警によると、元講師は当時、東京の製薬会社と共同研究を進めることが決まっており、府警の調べに「効果を確認すれば新治療薬開発が視野に入ると期待した」と供述。再生医療に必要なレベルの培養設備は「新設・維持するコストが膨大」として無許可培養を行ったという。コストを抑えるため、培養加工には医療用ではなく、動物実験用の試薬を用いていた。
さらに、元講師が事件の1年半以上前の平成29年8月ごろから、知人の獣医師(64)の同細胞を無許可培養していたことも判明。府警などによると、獣医師は別の医療機関で手首に自分の同細胞を注射する正規の再生医療を受けた後、治療継続のために、余った同細胞の培養を元講師に依頼。定期的に受け取り、自ら点滴投与していたという。獣医師は取材に「認可はすぐ下りると聞いていた」と話した。
府警は31日までに、国への届け出なしに被験者の女性(47)に同細胞を点滴投与したなどとする同法違反容疑で元講師を追送検。培養や投与に関与した部下の男性助教(39)と看護師の女性2人、被験者のクリニック元院長(82)と獣医師の計5人も同容疑で書類送検した。
府警は1月15日、元講師と共同研究先だった医療関連会社元幹部(62)を逮捕。2人は同27日に処分保留で釈放され、大阪地検が捜査を続けている。