安倍晋三首相が1月20日の施政方針演説で「台湾」に言及したことに関し、事前に台湾当局に伝わっていたことが2日、分かった。中国の習近平国家主席が4月に国賓待遇で来日する予定だが、台湾との関係も引き続き重視する姿勢を示した形だ。
自民党関係者は「中国との戦略的互恵関係は非常に大切だが、日本として台湾を除外するわけではないとの配慮を感じた」と話している。
首相は衆参両院本会議の施政方針演説で、今夏の東京五輪・パラリンピックに参加する選手団を受け入れる「ホストタウン」の自治体と相手国・地域としてオーストラリア、クウェートとともに台湾を挙げた。日本と外交関係がない台湾が施政方針演説に登場したのは平成18年の小泉純一郎首相(当時)以来で、議場内から拍手が起きた。
台湾の蔡英文総統は首相の演説当日、自身のツイッターで「『台湾』という言葉が日本の国会で大きな拍手を浴びたのは実に嬉(うれ)しいことです!」と日本語で歓迎の意を示した。
一方、超党派議員連盟「日華議員懇談会」(古屋圭司会長)は近く役員会を開き、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、世界保健機関(WHO)に加盟していない台湾の参加をWHOなどに働きかけることを検討する。台湾は「一つの中国」原則を掲げる中国の妨害でWHOに加盟していない。
首相は1月30日の参院予算委員会で「政治的な立場で排除することを行っては、地域全体を含めた健康維持、感染防止は難しい」と述べ、台湾のWHO参加の必要性を主張した。(内藤慎二、広池慶一)