滋賀県東近江市の湖東記念病院で平成15年、人工呼吸器のチューブを外し男性患者=当時(72)=を殺害したとして殺人罪で懲役12年が確定し、服役した元看護助手、西山美香さん(40)の裁判をやり直す再審初公判が3日、大津地裁(大西直樹裁判長)で開かれた。西山さんは罪状認否で「私は殺していません」と起訴内容を否認し、無実を訴えた。検察側は有罪立証を事実上断念する考えを示し、西山さんの無罪がほぼ確実となった。
10日の第2回公判で検察、弁護側双方が論告や弁論を行って結審し、判決公判は3月31日の予定。
この日は、裁判がやり直されることから、検察側は改めて西山さんがチューブを外して患者を殺害したとする起訴状を朗読。だが続く冒頭陳述で「被告(西山さん)が有罪との新たな立証はせず、確定審や再審での証拠に基づき、裁判所に適切な判断を求める」と述べ、有罪立証を事実上断念する構えを見せた。
ただ、次回の論告で求刑を放棄したり積極的に無罪を認める「無罪論告」をしたりするかどうかは、言及しなかった。
これに対し弁護側は「死因は犯罪による死ではなく自然死。自白については重要な点がめまぐるしく変遷し、嘘であることは明らかだ」などと主張。「(西山さんが)呼吸器を外し殺した事実はない」と無罪判決を求めた。
西山さんは16年、滋賀県警の聴取に「患者の呼吸器のチューブを外して殺害した」と自白し逮捕、起訴された。大津地裁で懲役12年の判決を受け、19年に最高裁で確定。だが、第2次再審請求審で大阪高裁は29年、患者が不整脈で自然死した可能性を指摘し、再審開始を決定していた。