【北京=西見由章】肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大をめぐって中国当局が、米国による入国制限措置などについて「過剰反応だ」と批判を強めている。中国をライバル視する米国が新型肺炎を利用して新たな中国脅威論を作り出し、国際的に「中国を隔離」(中国の研究者)しようとしているとの疑念が背景にある。
米政府による中国全土への渡航中止勧告や中国からの入国制限措置を受けて、中国外務省の華春瑩(か・しゅんえい)報道官は3日、「不断にパニックを拡散し、率先して悪い前例をつくっている」と非難。2019~20年に米国で流行したインフルエンザでは1900万人が感染、1万人以上の死者が出たと言及して米国の「過剰反応」(華氏)を批判した。
華氏は日本などによる防疫物資の支援に感謝する一方、「米政府は中国側に何ら実質的な援助を提供していない」とまで断言した。
なぜ中国当局は米国批判を先鋭化させているのか。中国現代国際関係研究院の董春●(=山へんに令)氏が4日付の共産党機関紙、人民日報系の環球時報に寄稿した文章がヒントになりそうだ。董氏は、中国の台頭抑止を狙う米国が、その困難に付け入ろうとしていると指摘。ロス米商務長官が新型肺炎を機に「北米に雇用が戻る動きが加速する」と発言したことを、「他人の不幸を喜んでいる」と批判した。
また米メディアが新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」「中国ウイルス」と表現していることに触れ、機に乗じて新たな「中国脅威論」を作り出そうとしていると非難した。