【カイロ=佐藤貴生】トランプ米大統領は一般教書演説で、イランに核兵器保有の試みやテロの拡散の停止を改めて要求し、「米国市民を攻撃したら命を失う」とイラン側を強く牽制(けんせい)した。また、1月下旬に公表したイスラエルとパレスチナの和平案を「革新的」だと自賛した。これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は5日、和平案は「米国にとって害となる」と述べて批判した。
ウクライナの旅客機撃墜の“隠蔽”などを受けイランではデモが起きているが、イスラム教シーア派の指導体制が揺らぐ事態には至っていない。イラクではイランと連携するシーア派民兵組織によるとみられる米軍施設へのロケット弾攻撃が続いており、米兵などに犠牲者が出れば一気に緊張が高まる可能性もある。
また、トランプ氏が演説で、イランの脅威と中東和平の問題の双方に主体的に関わる姿勢を強調したことで、スンニ派アラブは難しい対応を迫られそうだ。
中東和平で長くパレスチナを支持してきたアラブ諸国は、一方でイランの脅威に対抗するため米軍の支援が欠かせず、米国の顔色をうかがわざるを得ない立場になっているとされる。イスラエル寄りの和平案公表の場にはアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーンなどの外交官が出席した。
各国がイランの脅威への対処を優先し、パレスチナ問題の重要度が下がる可能性は否定できず、中東全域がトランプ政権の政策に翻弄されることは確実だ。