景気の拡大期に終幕の兆しが見えている。内閣府が7日発表した令和元年12月の景気動向指数は、基調判断が5カ月連続で景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に据え置かれた。同日公表した日本経済の現状を分析する別の報告書でも前年明記した「戦後最長に並ぶ景気回復」の表記が消えた。米中貿易摩擦による輸出低迷や消費税増税、新型コロナウイルスの感染拡大と相次ぐ下押し材料が景気の勢いを弱めている。
景気動向指数(平成27年=100、速報値)は、景気の現状を示す一致指数が前月から横ばいの94・7だった。世界経済の減速で企業の生産活動が停滞したほか消費税増税による節約志向も影響したとみられる。
基調判断は一致指数の推移で機械的に決める。令和元年3月に6年2カ月ぶりの「悪化」となった後、5~7月は「下げ止まり」に改善したが、8月以降は再び「悪化」が続く。5カ月連続の「悪化」は、平成20年6月から21年4月までの11カ月間以来の長さだ。
政府は米中摩擦で輸出企業の業績が落ちる中、内需の堅調さを背景に第2次安倍晋三政権の発足(24年12月)とともに始まった景気拡大がいまだに継続しているとの立場を取ってきた。
ただ、消費税増税や暖冬による冬物商品の販売鈍化の影響で、総務省が7日発表した令和元年12月の2人以上世帯の消費支出は3カ月連続のマイナス。17日に発表予定の10~12月期の国内総生産(GDP)も、1年3カ月ぶりのマイナス成長になるとの見方が強い。
大和総研の神田慶司シニアエコノミストの試算では新型肺炎の流行が今後1年程度続けば、2年暦年でもマイナス成長に沈む可能性がある。拡大基調が続いているといえるかは微妙だ。
実際、7日公表の「日本経済2019-2020」(ミニ経済白書)では景気が「穏やかな回復を続けている」との判断は維持したが、前年版で強調した「戦後最長」の表現はなくなった。内閣府幹部は「指数が良くないのに踏み込んで書く度胸はない」と漏らす。
景気の“山谷”に関する公式判断は、内閣府が専門家を集めた景気動向指数研究会が検証して決める。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「拡大期は平成30年10月に終わり、現在は後退期に入っていると思う。景気の山谷は1年以上たってから認定されるが、既にいつ行われてもおかしくない状況」と指摘する。(田辺裕晶)