夏のボーナス支給始まる:平均額は増加も、大企業と中小企業の「二極化」が鮮明に

今年の夏のボーナス支給が各社で始まっている。帝国データバンクの調査によると、全体の平均支給額は前年を上回り増加傾向にある。しかし、その詳細を見ると、支給額の増加は大企業が主導しており、中小企業との間で「格差」が拡大している実態が浮かび上がっている。

ビジネスパーソンがボーナスについて考える様子(二極化する夏季賞与のイメージ)ビジネスパーソンがボーナスについて考える様子(二極化する夏季賞与のイメージ)

帝国データバンク調査に見る「平均増加」の裏側

帝国データバンクが6月に発表した「2025年夏季賞与の動向アンケート」(回答企業1227社)によれば、全体の平均支給額は45万7千円となり、前年の43万9千円から1万8千円増加した。

規模別に見る格差

しかし、賞与が「増えた」と回答した企業の割合を規模別に見ると、大企業では38.4%だったのに対し、小規模企業では27.0%にとどまった。「賞与はあるが変わらない」は37.0%、「賞与はあるが減少」は12.0%、そして「賞与はない」と回答した企業も13.0%存在した。このことから、平均額の増加は主に大企業による押し上げであり、企業規模による格差が広がっている状況がうかがえる。

増加の背景と懸念材料

賞与を増額した企業の背景には、人手不足の深刻化や物価高への対応、あるいは好業績によるものなど、様々な要因がある。「人手不足の状況が厳しくなるなか、賃金を上げていかなければ必要な人員が確保できない」「4月の賃上げに続いて夏季賞与についても増額した」といった声が聞かれる。

一方で、先行き不透明感から慎重な姿勢を見せる企業もある。「トランプ関税などで先行きが不透明なため、夏は控えめに支払い、関税の影響がなければ夏の不足分を冬で支払う」という回答もみられた。

帝国データバンクは、これらの状況を踏まえ「総じてみると、夏季賞与の支給は企業の間で二極化の兆しがみえている」と分析している。

大手企業は過去最高を更新 労務行政研究所のデータ

大手企業のボーナス状況は、一般財団法人労務行政研究所の調査からも確認できる。東証プライム上場企業で回答を得た114社の平均支給額は86万2928円で、前年比3.8%増となり、過去最高額を更新した。

東証プライム上場企業の好調

コロナ禍の2021年には71万397円と落ち込んだが、以降4年連続で増加傾向が続いている。

業種別の動向

業種別では「自動車」が104万4621円で最も高い平均支給額となった。前年の101万2443円から3.2%の増加である。「鉄鋼」(93万4千円、前年比3.5%減)を除き、調査対象のほぼ全ての業種で支給額が前年を上回る結果となった。

今年の夏季賞与は、全体平均では増加を見せたものの、その実態は企業規模による二極化が進んでいることを示唆している。特に大手企業では過去最高を更新するなど好調である一方、中小企業では増加の恩恵が限定的であり、この格差が今後の経済動向の一つの焦点となりそうだ。

  • 帝国データバンク「2025年夏季賞与の動向アンケート」
  • 一般財団法人労務行政研究所 調査データ