□『中国の正体 知ってはいけない「歴史大国」最大のタブー』
インターネットの検閲をはじめとする言論統制やウイグル人の強制収容、新型肺炎では町ごと封鎖するなど、強権的な独裁体制を続けている中国。その中国共産党が独裁政権を維持するための根拠としているのが「正統」です。
現代の中国は、漢人の末裔(まつえい)の国で、歴代中華王朝の正統な継承者として歴史も領土も引き継いでいるとして、かつて領土だった地も少数民族もすべて「中国」「中国人」だと主張しています。
本書では、漢人はすでに唐の時代には滅び、現在の中国人は漢人ではないという驚くべき事実を明かしつつ、チベットやウイグル、台湾、南シナ海を「古代から固有の領土」とする中国の主張に根拠がないことを論証しています。
また、中国では嘘やだましが一種の文化として定着している実態を暴露。その嚆矢(こうし)が孔子や司馬遷で、踏襲した歴代王朝の記録文書は虚偽だらけとなり、その内容を正すために清の時代に考証学が発達したことを解説します。
さらに日本の仮名を含め、10世紀ごろにアジア各国で相次いで独自の文字が生まれたのは、中国から伝わった漢字の欠陥を補うためで、漢字の文章体系を墨守してきた中国では言葉の意味が曖昧となり、近代には西洋文明を翻訳できず、日本から和製漢語を輸入しなくてはならなかったことなど、中国にとっての「不都合な事実」が満載です。
これまでの中国観が一変するとともに、かの国の本質を理解するための格好のテキストとなっています。(徳間書店・1500円+税)
徳間書店学芸編集部・明石直彦