金建希氏逮捕:韓国前大統領夫人、初の身柄拘束と深まる疑惑

【ソウル発】韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)前大統領の妻、金建希(キム・ゴンヒ)氏(52)に対する不正疑惑を捜査する特別検察官の捜査チームは、13日未明までに金氏を逮捕しました。斡旋(あっせん)収賄や資本市場法違反などの容疑で請求された逮捕状に対し、ソウル中央地裁が12日深夜、「証拠隠滅の恐れがある」と判断し、発付を認めたものです。韓国において大統領経験者の妻が逮捕されるのは史上初めてのことであり、昨年12月の「非常戒厳」宣言を受け、内乱首謀罪などで公判中の尹氏が既に拘置所に勾留されていることから、大統領経験者の夫妻が同時に身柄を拘束されるという前例のない事態となりました。金氏に繰り返し指摘されてきた数々の疑惑を巡る捜査は、今回の逮捕により新たな局面を迎えることになります。

韓国の金建希氏。前大統領夫人として様々な疑惑が報じられている韓国の金建希氏。前大統領夫人として様々な疑惑が報じられている

逮捕の経緯と主な容疑

ソウル中央地裁は12日、金建希氏の逮捕状発付の是非を判断するための審査を開き、金氏本人が出廷しました。審査後、金氏は夫である尹氏とは別の拘置所に勾留されています。今回の逮捕は、長年にわたり金氏を巡って浮上していた複数の疑惑に対する特別検察官の本格的な捜査の進展を示すものです。主な容疑として挙げられているのは、特定の人物への便宜を図る見返りに金銭や利益を受け取る「斡旋収賄」と、株式市場において不正な手段で株価を操作する「資本市場法違反」です。これらの容疑は、金氏が過去に関与したとされる様々な経済活動や人間関係に起因するものと考えられています。

疑惑の中心「6千万ウォン相当ネックレス」の真偽

逮捕状審査の過程では、金氏が2022年の尹氏の初の外遊時に身に着けていたとされる、6千万ウォン(約640万円)相当のネックレスが捜査チームによって重要な証拠として提出されました。このネックレスについては、ある建設会社の会長が「金氏に贈呈したが、不正疑惑が浮上した後に返された」と自供し、捜査当局に提出したとされています。これに対し、金氏側は当時身に着けていたのは「模造品だ」と主張。その後の家宅捜索で、実際に模造品が押収されました。しかし、捜査当局は、金氏側が捜査を攪乱(かくらん)する目的で模造品を仕込んだものとみており、韓国メディアは「本物のネックレスが逮捕の“切り札”になった」と報じています。このネックレスを巡る攻防は、今回の逮捕の決定打の一つとなった可能性が高いです。

広がる疑惑と特別検察官の捜査本格化

金建希氏にかけられている疑惑はネックレス問題に留まりません。特別検察官の捜査チームは13日、一連の疑惑と関連して、尹政権で与党だった「国民の力」の党本部を家宅捜索しました。これは、金氏の疑惑が政党内部にも波及する可能性を示唆しています。これまでの報道によれば、金氏には、呪術師を介して世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の元幹部から不正に高級バッグを受け取った疑いや、輸入車販売会社の株価操作に深く関与した疑いなどが持たれています。金氏側はこれらの容疑に対し、全面的に否認の姿勢を示しています。

かつて検察は株価操作などの事件で金氏を不起訴処分としていましたが、李在明(イ・ジェミョン)政権が今年6月に発足した後、政府から独立した特別検察官が尹夫妻の疑惑を捜査するための法案が国会で可決され、今回の捜査本格化へと繋がりました。

今後の韓国政界の行方

金建希氏の逮捕は、韓国の政治状況に大きな影響を与えることは必至です。前大統領夫妻が同時に身柄を拘束されるという前例のない事態は、韓国社会に大きな衝撃を与え、国民の政治不信をさらに深める可能性があります。特別検察官による捜査は今後も厳しく進められ、金氏の様々な疑惑の全容が解明されるかどうかに注目が集まります。この歴史的な逮捕劇は、韓国の権力構造と司法の独立性、そして次期政権の動向にどのような影響を与えるのか、引き続き注視していく必要があります。


出典:Yahoo!ニュース (記事元:産経新聞)