【北京=三塚聖平】中国各地では10日、肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染拡大に伴って休業を続けていた企業が約半月ぶりに活動を再開させた。ただ、通勤時の感染を防ぐため在宅勤務を続ける企業や、各地でとられている制限措置により職場に復帰できない従業員も多い。いまだに感染拡大に歯止めが掛からない中で、経済活動の完全再開にはまだ時間を要する見通しだ。
10日朝の出勤時間帯、北京市中心部の地下鉄駅では利用客の姿はまばらだった。春節(旧正月)の大型連休が明けた3日よりは多い様子だったものの、平常時からは程遠い状況にとどまっている。
北京市は9日まで出勤を控えるよう企業に求めていたが、北京のベンチャー企業の社員は「感染防止のため10日以降も在宅勤務を続けることになった」と話す。帰省先から戻ってきた社員を「経過観察」するため2週間程度は出社させないという企業も多く、特に人手が必要な工場の本格再開には時間がかかっているもようだ。
各地では感染拡大を防ぐため、人の動きを制限する措置が強化されている。中国メディアによると、江蘇省無錫(むしゃく)市は8日、感染者が多い湖北、浙江、広東など計7省から来た人が市内へ立ち入ることを規制する措置を表明。無錫には、日系企業も多いため影響が懸念される。北京市も居住区などで人の出入りを厳しく管理することを求める通知を10日に出している。
一方、経済活動の停滞により打撃を受けているのが飲食店だ。人手不足などにより長期休業を余儀なくされている店が多いほか、営業中の店も客足が激減している。さらに、北京市は飲食店などにおけるグループでの会食を禁じる措置を5日に表明。感染拡大を防ぐためとしており、違反した場合には「法に従って厳格かつ重く迅速に処分する」と明言している。
飲食店は地方出身の若者らの主要な働き口のひとつとなっており、新型肺炎の影響が長期間続けば失業者の増大といった事態を招く恐れもある。