日産自動車 株主から不満噴出 遠い再出発





日産自動車の臨時株主総会に向かう人たち=18日午前、横浜市

 同一年度で2回目となる異例の臨時株主総会で、内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)が正式に取締役に選任された日産自動車。だが再出発を印象づけるには遠く、株主からは不満が噴出。日産は業績回復に加え、仏ルノーとの企業連合の行方、コーポレートガバナンス(企業統治)改善-という3つの課題に同時並行で取り組むという難局を迎えている。

■歯止め見通せず

 「期末配当の見送りは本当に申し訳ない」。内田氏は社長に就任して初の株主総会で謝罪に追われた。

 集中砲火を浴びた理由は業績悪化と株価低迷。令和元年10~12月期は最終赤字。配当見送りも公表された。かつて1500円超だった株価は一時、492円とリーマン・ショック当時並みに下がった。

 世界販売台数減少の要因とされる新型車投入の遅れについて内田氏は「(令和2年度)後半から大きく改善する」と自信を見せた。しかし米中摩擦や新型肺炎で需要減が懸念され、改善の見通しは立っていない。

■シナジーか足かせか

 「3カ月後は遅い」。株主が切って捨てたのは、内田氏が経営立て直しの対応を「5月の中期経営計画見直しまでに」とした時だ。

 「5月」はルノー、三菱自動車との企業連合で合意した共通の見直し時期。連合内の相乗効果が不可欠と内田氏は強調するが、連合の存在が経営スピードの低下を招いてもいる。

 直近1年の混乱は、ルノーが筆頭株主として日産への影響力強化に動いたことも要因。現在は通期最終赤字のルノーも「協業拡大以外に選択肢はない」(ジャンドミニク・スナール会長)と低姿勢だが、日産の低迷が続けば、ルノー筆頭株主のフランス政府の意向も相まって、連合のあり方も不安定化しかねない。

■外部出身、求心力は…

 商社出身の内田氏が指揮を執る新体制で、生え抜きで社長待望論もあった関潤氏が副最高執行責任者(COO)就任1カ月ほどで退社したことも、株主に少なからず動揺を与えた。

 最近は連合解消やルノー以外との資本提携も取り沙汰される。関係者は「一部の人間が思ったことを口にしているだけ」と否定するが、「重し」が外れ、親ルノーと反ルノーの社内対立が表面化しやすい状況だ。

 ゴーン被告は海外逃亡したが、元取締役、グレゴリー・ケリー被告の公判は開かれる可能性があり、企業イメージの再悪化も想定される。内田氏は「業績改善の状況が見えなくなった場合は、私をクビにしてください」と悲壮な覚悟を示した。(今村義丈)



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