相模原殺傷 弁護側、無罪主張で結審 植松被告「控訴しない」





 横浜地裁で開かれる植松聖被告の裁判員裁判第16回公判で、傍聴券を求めて列を作る人たち=19日午前、横浜市

 相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年7月、入所者ら45人が殺傷された事件で、殺人罪などに問われた元職員、植松聖(さとし)被告(30)の裁判員裁判の第16回公判が19日、横浜地裁(青沼潔裁判長)で開かれた。弁護側は最終弁論で、大麻使用の影響で心神喪失状態にあったなどとして、植松被告の完全責任能力を否定、改めて無罪を主張した。

 最終意見陳述で植松被告は「どんな判決でも控訴はしない」と話した一方、これまでのように重度障害者の家族に対して差別的な持論を展開し、結審した。判決は3月16日に言い渡される予定。

 弁護側は、植松被告の犯行直前の言動や、診断を行った精神科医の証言などから、大麻の乱用による「大麻精神病」の状態であったと指摘。「自らの行為の意味を真に理解していたとは思えない」「善悪を判断する能力はなかった」とした。

 また、犯行当時の植松被告を「ブレーキが壊れて、アクセルが入りっぱなしの状態だった」などと、たとえを用いて説明。「この事件がどれほど悲惨でも、被告には無罪が言い渡されるべきだ」と強調した。

 検察側は17日の論告で「被告人の行動は統制されており、犯行の発想から実行までの大麻使用の影響は小さかった」と主張。植松被告は犯行当時、完全責任能力を有しており、犯行は「卑劣で残忍、冷酷無比と言わざるを得ない」として死刑を求刑していた。

 身勝手な主張を繰り返す植松被告の態度は19日も変わることはなかった。

 植松被告は公判の中で、「自分は責任能力がある」とし、弁護側が「精神病」の根拠としている大麻についても「本当に素晴らしい草」などと述べてきた。そのためか、1時間余りにわたり弁護側が無罪を訴える間も、どこか遠い目をしながら、表情を変えることはなかった。

 裁判長から最後に意見がないかうながされると、植松被告は証言台前に座ったが、「どんな判決でも控訴はしません」と述べた。このほかにも、「裁判はとても疲れるので負の感情が生まれる」「やくざは気合の入った実業家です」「重度障害者の親はすぐに死ぬと知りました。病は気から。人生に疲れて死んでしまう」「この裁判の本当の争点は、自分の意思疎通が図れなくなることを考えること」などと大声でまくしたて、話し終えると満足したように周囲に頭を下げた。

 初公判から傍聴を続けてきた、事件で重傷を負った尾野一矢さん(46)の父、剛志さん(76)は閉廷後、「どこに本心があるのか、今もって分からない」と、表情を曇らせた。



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