豪森林火災でコアラ“絶滅危惧”論争 





救出後、重さを量られる鎮静状態のコアラ=4日、オーストラリア東部ニューサウスウェールズ州(ゲッティ=共同)

 【台北=田中靖人】大規模な森林火災に見舞われたオーストラリアで、コアラの絶滅を危惧する声が上がり、論争になっている。被害が甚大な東南部ニューサウスウェールズ州の北部では、生息数の80~85%が死んだ地域もあるとの推計が出ている。これに対し、別の専門家は「全土で見れば絶滅の恐れはない」と指摘している。

 ロイター通信によると、同州の消防当局は14日、「全ての火災を封じ込めた」として、事実上の制圧宣言を出した。火災は約6カ月に及び、全土で日本の国土面積の3分の1に相当する約1200万ヘクタールが消失。コアラを含む野生動物10億匹が犠牲になったとの推計もある。レイ環境相は10日、コアラが近く「絶滅危惧種」に指定されるとの見通しを示した。豪州政府は被災した野生動物の保護・救済に5千万豪ドル(約37億円)を拠出する。

 地元紙オーストラリアン(電子版)によると、世界自然保護基金(WWF)の幹部は18日、ニューサウスウェールズ州議会の公聴会で、コアラが「絶滅に向かっている」と証言した。シドニー大は、同州で生息数の3分の1に相当する約8千匹が、南部・南オーストラリア州カンガルー島では半数の約2万5千匹がそれぞれ焼死したと推計している。

 一方、豪州全土での生息数は少なく見積もって10万~20万匹と推計されており、ディーキン大の研究者は「一部の地域で絶滅しても、全土では絶滅の恐れはまだない」と指摘する。コアラは2012年に北東部クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州などで絶滅危惧より一段階低い「危急種」に指定されたが、南東部ビクトリア州などでは数が増えすぎて避妊手術や安楽死をさせたこともある。



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