【国際情勢分析】トランプ政権、安保60年で日本に賛辞も…見通せぬ駐留経費交渉





1月19日、日米安全保障条約の記念式典で鏡開きをする(左から)麻生太郎副総理、安倍晋三首相、アイゼンハワー元米大統領の孫のメアリーさんら=外務省飯倉公館(AP)

 現在の日米安全保障条約の署名60年を迎えた1月19日、日本政府が外務省飯倉公館(東京都港区)で開いた記念式典で、米国のヤング駐日臨時代理大使はトランプ大統領の声明を読み上げた。会場に日本の政権幹部がずらりと並ぶ中、米側が日本に敬意を示した形で、日米両政府が緊密であることを意味する。

 「これからトランプ大統領の声明を日本語で読ませていただきます」

 式典で挨拶に立ったヤング臨時代理大使はこう語り始め、「日米同盟をさらに強化し、深めることは必要不可欠」とするトランプ氏のメッセージを伝えた。

 声明では、日米同盟は「全世界の平和、安定、繁栄に不可欠だ」とも強調し、国際社会で日本が果たしている役割を高く評価した。会場には安倍晋三首相、麻生太郎副総理兼財務相、茂木敏充外相、河野太郎防衛相らに加え、外務省や自衛隊の幹部らが一堂に会しており、うれしい賛辞であることは間違いない。

 日本側も、日米安保条約の署名時に米大統領だったアイゼンハワー氏の孫、メアリーさんを特別ゲストで招くなど、式典の演出にもこだわった。在日米軍幹部や米政府高官らも参加した式典には、約250人が集まり、米国務省関係者は「素晴らしい式典だった」と振り返る。

 ただ、こうした良好な日米関係や強固な同盟がこの先も続くとは限らない。

 トランプ政権は「公平な負担の共有に基づく同盟関係」を掲げていて、日本に対して在日米軍駐留経費の負担増を要請する構えだ。当局間の交渉で、米側がどこまで強硬姿勢を示すかは見通せず、日本政府内には警戒感も強い。

 トランプ政権は、在韓米軍駐留経費で韓国に従来の負担額の約5倍を要求。交渉はこじれ、ポンペオ国務長官とエスパー国防長官が米紙に連名で寄稿し、韓国の負担増を訴える異例の事態となっている。

 北大西洋条約機構(NATO)をめぐっては、加盟国に国防費支出の拡大を強く求めるなど、トランプ政権が米軍の海外展開で関係国に負担増を要求する姿勢は明白。在日米軍駐留経費に関する今後の当局間協議が日米関係や同盟にどう影響していくかを注視する必要がある。

 また、トランプ氏は在韓米軍に関し「いつかは(撤収や縮小も)あり得る」と述べており、米国がアジアへの関与を弱める可能性もある。米国が日韓などの米軍の縮小や撤収に踏み切れば、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍備増強が加速し、アジアが不安定化することは想像に難くない。

 トランプ氏は、日米安保条約の記念式典で伝えられた声明の中で、「日本の貢献が今後も拡大し、同盟関係が栄えていくと確信している」と指摘した。日本は安倍政権下で安全保障関連法を成立させ、自衛隊による米軍艦艇・航空機の防護などの実績を重ねてきたが、米国はさらなる役割を同盟国として求めている。(坂本一之)



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