運輸安全委員会は27日、登山道の調査をしていた群馬県の防災ヘリコプターが平成30年8月、同県中之条町の山中に墜落し、乗員9人全員が死亡した事故の調査報告書を公表した。天候悪化のため雲の中を飛行して周囲の地形が確認できなくなり、天海(あまがい)紀幸機長=当時(57)=が、機体の姿勢を錯覚する「空間識失調」に陥り、正常に操縦できなくなったのが原因とした。当日のヘリの運航は目視に頼る「有視界飛行方式」だった。
安全委は、防災や警察などのヘリは業務上、気象条件が急変しやすく予測も難しい山あいを飛ぶケースが多く、空間識失調になる危険性を伴うとして、早めの引き返しや目視から自動操縦に切り替える判断の徹底を求めた。国土交通相にも予防策の周知を勧告した。
報告書によると、「ベル412EP」型の防災ヘリ「はるな」は30年8月10日午前9時14分ごろ、前橋市の群馬ヘリポートを離陸し午前10時1分ごろ墜落した。