【カイロ=佐藤貴生】シリアのアサド政権軍とトルコ軍の戦闘が続くシリア北西部イドリブ県で27日、アサド政権軍が空爆を行い、トルコ軍兵士33人が死亡、32人が負傷した。イドリブのシリア反体制派武装勢力を支援するトルコに対し、アサド政権の後ろ盾であるロシアは28日、巡航ミサイルを積んだ軍艦2隻をシリア近海に派遣すると表明、軍事衝突が本格化する恐れが出てきた。
ロイター通信が伝えた。トルコのメディアは28日、同国軍が報復攻撃に着手したと伝え、国会議長は「トルコ(軍)を攻撃すれば厳しい反撃にあう」とアサド政権やロシアを牽制(けんせい)した。トルコのエルドアン大統領はアサド政権側に対し、今月末までにイドリブ周辺から撤退しなければ武力で退ける意向を示唆していた。
一方、ロシアのメディアは27日、トルコ軍が迫撃砲で政権軍やロシア軍の軍用機を撃墜しようとしていたと伝えた。ロシア国防省は空爆への関与を否定し、空爆された場所にトルコ軍兵士がいるとの連絡はなかったとしている。トルコとロシアの政府高官は27日、停戦を目指して協議を行ったが成果はなかったもよう。
空爆を受け、約360万人のシリア難民を抱えるトルコの高官は28日、国内の難民を欧州に向けて越境させる方針を表明。数百人の難民がギリシャとの国境に向かったとの情報もある。北大西洋条約機構(NATO)は加盟国トルコの要請を受け対応の協議のため、28日にブリュッセルで緊急会合を開くことを決めた。
シリア難民の流入を避けたいトルコは2018年、反体制派武装勢力の最後の拠点であるイドリブ県の周囲に非武装地帯を設け、武装勢力の重火器類を撤去させることでロシア側と合意。しかし、アサド政権とロシアはトルコが武装解除を進めておらず、主権を侵害しているなどと批判し、今月に入り戦闘が激化していた。