【カイロ=佐藤貴生】シリア北西部イドリブ県で反体制派を支援するトルコとアサド政権側の戦闘が激化するなか、トルコのエルドアン大統領は5日、政権側の後ろ盾であるロシアの首都モスクワを訪問してプーチン露大統領と会談する。ロイター通信が2日、伝えた。エルドアン氏は停戦実現に向けて期待を示したが双方の隔たりは大きく、事態が収束するかは不透明だ。
シリア人権監視団(英国)は1日、イドリブでアサド政権のスホイ戦闘機2機がトルコ軍のF16戦闘機に撃墜されたもようだと伝えた。同国軍はシリア北部アレッポの軍用空港も攻撃、使用不能にしたとしている。攻撃を受けてロシア国防省は「シリア領空でのトルコの航空機の安全は保証できない」と警告した。
シリア難民の流入防止のため、イドリブの情勢安定化を求めるトルコに対し、アサド政権はトルコが領土主権を侵害していると非難。トルコは2018年、非武装地帯を設けてイドリブの反体制派武装勢力の重火器類撤去を進めることでロシアと合意したが、ロシアは武装解除が進んでいないと批判してきた。
2月27日にはアサド政権軍の空爆でトルコ軍兵士33人が死亡し、360万人のシリア難民を抱えるトルコは翌28日、欧州に難民を越境させると表明した。
隣国ギリシャとの国境付近には1日、最大1万3千人の難民が殺到し、ギリシャの治安部隊が催涙ガス弾を発射して越境を阻止する事態となった。レスボス島などギリシャ領の島に、1日朝以降、少なくとも1千人がトルコから到着した。
トルコは難民を送り込むと述べることで、イドリブでの停戦実現に向けて欧州を味方につけ、ロシアへの圧力を強める狙いとみられる。欧州ではトルコに対する反発も出ているもようで、トルコの思惑通りに事が進むかは不透明だ。