鹿児島県南方のトカラ列島近海で、小規模な地震が相次いで発生し、SNS上では大地震の兆候ではないかといった根拠のない情報が拡散しています。日本気象庁の観測によると、トカラ列島では今月21日から28日午後6時までに、震度1以上の地震が525回観測されました。この頻繁な地震活動は、過去にも同地域で見られた現象であり、地質学的な背景が指摘されています。
鹿児島・トカラ列島で続く群発地震活動
最新の観測状況と過去の事例
今月21日以降、トカラ列島近海では地震活動が活発化しており、28日にも40回以上の地震が発生しました。観測された最大の地震はマグニチュード4.7でした。トカラ列島では、2021年12月や2023年9月にも、それぞれ300回を超える小規模な群発地震が発生しています。
震度とマグニチュードの違いとは
地震の規模を表す指標には、「震度」と「マグニチュード」があります。震度は、ある場所での地震の揺れの強さを表す日本の尺度であり、地震が起きた際にその地域にいる人が感じる揺れや、建物の被害の程度などから算出される相対的な指標です(震度1が最も弱く、震度7が最も強い)。一方、マグニチュードは、地震そのもののエネルギーの大きさを表す絶対的な指標です。今回のトカラ列島での地震は、回数は多いものの、多くが小規模な揺れ(震度1程度)であり、最大マグニチュードも4.7に留まっています。
トカラ列島の地質構造と活発な地殻変動
日本経済新聞など複数のメディアが伝えるところによると、トカラ列島周辺は、フィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込む琉球海溝に近接しています。また、この地域には火山島や海底火山が多く存在し、地殻変動が活発なことで知られています。こうした地質的な背景が、群発地震が発生しやすい要因の一つと考えられています。
昨年、同じ鹿児島県内で地震があった大崎町の風景
「トカラの法則」を巡る憶測と専門家の分析
トカラ列島で群発地震が頻発すると、SNSなどでは「トカラの法則」と呼ばれる俗説が取り沙汰されることがあります。これは、トカラ列島近海で地震が相次いで発生すると、別の場所で大地震が起きる前兆であるとするものです。
専門家による根拠否定
日本のメディアの取材に対し、専門家はこの「トカラの法則」について科学的根拠がないと指摘しています。熊本大学の横瀬久芳教授は毎日新聞の取材で、「今回の地震はすべて小規模」であり、「この程度の地震が巨大地震を誘発するとは考えにくい」と述べています。東京科学大学の中島淳一教授も日本経済新聞に対し、「日本は地震が発生しやすいため、群発地震がある間に他の場所で地震が起きることは珍しくない」とし、「科学的にトカラ地震と巨大地震が関係していると見ることは難しい」と説明しています。
南海トラフ地震や他の地震予測との関連性
南海トラフ地震との関係性
専門家は、今後30年以内に80%程度の確率で発生するとされる、日本列島南部の南海トラフでのマグニチュード8~9クラスの大地震についても言及し、今回のトカラ列島の群発地震との関連性はないと強調しています。南海トラフとトカラ列島近海は、地質構造や地震発生メカニズムが異なると考えられています。
マンガを根拠とする海外の噂
また、トカラ列島の群発地震とは別に、香港など海外の一部では、漫画家のたつき諒さんの作品『私が見た未来 完全版』などを根拠に、2024年7月に日本で大地震が発生するという噂も流れています。これについても、科学的な根拠は示されていません。
結論:冷静な情報収集と対応を
トカラ列島近海で発生している群発地震は、その回数の多さから不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、地震学の専門家は、今回の地震活動が小規模であり、俗説や噂されているような大地震に直接つながる科学的根拠はないとの見解を示しています。「トカラの法則」や特定の時期の大地震予測といった情報は、現在のところ専門家によって否定されています。私たちは、気象庁などの公的機関が発表する正確な情報に基づき、冷静に対応することが重要です。