【ロンドン=板東和正】イタリアで新型コロナウイルスの感染者数が急増したのは、最初に確認された感染者への初期対応の誤りが一因とされている。一方、イタリア政府が中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に参画したことで増加した中国からの観光客が「感染源」となった可能性は無視できないと指摘する意見もある。
英メディアによると、2月21日にロンバルディア州で最初に発症が発表されたイタリア人男性(38)が肺炎の症状で来院した当初、感染が疑われず、隔離されていなかった。その間に、男性と接触した同じ病院の医師や患者らに感染したとみられるという。院内感染で急速に感染が広がった可能性があり、国家市民保護局のボレッリ局長は現地メディアなどに「医療従事者の知識不足により、どのような症状を疑うべきか認知されていなかった」と指摘した。
また、男性が来院した看護師はロイター通信の取材に「最初の症例が確認される少なくとも1週間前から肺炎の症例が異常に増えている」とした上で「それらの患者は治療を受けて帰宅していた」と話した。男性よりも前に感染していた複数の患者が隔離されずに、周りの市民に接触してうつしていた恐れもある。
また男性は、発症が確認された数日前に中国から戻った知人と食事を共にしたが、知人は感染しておらず、詳細な感染経路は特定されないままだ。男性の発症が判明する約1カ月前、中国人観光客2人がイタリア旅行中に発症したことから、一部の専門家の間では、2人が国内で感染を広めたとの見方もある。
イタリア政府は昨年3月、先進7カ国(G7)で初めて「一帯一路」協力に関する覚書を締結した。ロイターなどによると、この影響で、同年5~8月にイタリアを訪れた中国人観光客は前年同期比約31%増えた。疫学を研究する英専門家は「中国観光客の増加が新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)のきっかけになったと現段階で言い切れないが、その可能性は完全には否定できない」としている。