【アテネ=三井美奈】ギリシャ・オリンピック委員会(HOC)が東京五輪の聖火採火式の縮小を決めたのは、新型コロナウイルス感染でギリシャ政府が対策を強化したのを受けた措置だ。同国では9日までに84人の感染が確認され、イベント自粛が相次いでいた。
ギリシャ政府は8日、感染対策で緊急閣議を開き、▽室内スポーツ・イベントは無観客試合とする▽集会は自粛▽児童の遠足中止▽感染地域の学校休校-などの措置を決めた。
さらに9日には政府の専門家委員会が、屋内外を問わず千人以上のイベント自粛を勧告。これを受け、首都アテネで22日に予定されていたハーフマラソンは開催延期が決まった。
HOCの9日の声明は、「状況を見ながら、国民の健康を守るために今後も必要な決定をする」としている。12日の採火式から1週間、ギリシャ国内で行われる聖火リレーでも、新たな措置をとる可能性を示したものだ。キキリアス保健相は9日、「感染拡大を阻止するため、国民みんなに責任を持ってもらいたい。この2週間が重要だ」と記者会見で訴えた。
ギリシャの危機感は、隣国イタリアが9千人を超す感染の「震源地」になっていることが背景にある。
アテネ市内は、マスク姿の人が目立ち、遺跡観光の観光客もめっきり減った。中心部の薬局に行くと、マスクや手指消毒用除菌ジェルは売り切れ。店主のパパイリオ・ニコスさんは「注文しても届かない。マスクは品薄で、市内で1枚1ユーロ(約118円)で売られている。以前の4倍ですよ」と話した。
採火式会場の古代オリンピアを擁するイリア県では、感染者が確認された後、学校休校が続く。
イタリアでは同国オリンピック委員会と主要スポーツ連盟が9日、4月3日までイベントを中止すると発表した。イベント自粛、あるいは「無観客」実施の動きは欧州各国で広がる。
採火式はオリンピアの古代遺跡、ヘラ神殿で実施される。ギリシャ国内での聖火リレーを経て19日、アテネで引継ぎ式が行われる。