台湾当局の新型コロナウイルス対策を称賛する声が広まっている。中国全土からの入域禁止を早期に決断するなど果断な対応を日本と対比する論調が目立つ。2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験が生かされている形だが、それ以外にも、事前に綿密な計画を立てるよりも先に実行に移し、事後に問題を修正していく行政運営の手法と、それを許容する世論の存在がありそうだ。(台北支局 田中靖人)
入域制限ほぼ日替わり
台湾の蔡英文政権が中国からの入域制限を始めたのは、湖北省武漢市が封鎖される前日の1月22日。武漢との団体旅行の往来を禁止したのを手始めに、24日には団体旅行の中止対象を中国全土に広げ、26日には観光以外でも湖北省からの来台を禁止した。
2月に入ると、入域禁止対象は広東省(2日)、浙江省温州市(3日)、浙江省全域(5日)、中国全土(6日)とほぼ日替わりで拡大。この間、外交部(外務省に相当)が4日、14日以内に中国に滞在した「全ての外国人」の入域を禁止すると発表。商業目的での訪台を認めていた中国人よりも厳しい制限を課しそうになったが、7日の実施段階で平仄(ひょうそく)を合わせた。
台湾の行政院(内閣)では法律上、「領土」とみなす中国大陸、香港、マカオを大陸委員会が、その他の「外国」を外交部がそれぞれ管轄しており、両者の調整不足とみられる。