【聖火は照らす 東日本大震災9年(1)】「FUKUSHIMA」負のイメージ払拭 未来へつなぐ希望



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 「困難な中にあっても前を向き、ともに歩んでいってください」

 3月1日、福島県双葉(ふたば)郡広野町にある県立中高一貫校「ふたば未来学園」で開かれた卒業式。丹野純一校長から贈られた言葉を、卒業生の一人、阿部聖央(まひろ)さん(18)=同県楢葉町(ならはまち)=は心に刻み込んだ。

 感染拡大が続く新型コロナウイルスの影響で、出席者は本校舎で学ぶ中高の卒業生約150人と保護者のみ。在校生と来賓の参加は取りやめになった。丹野校長の言葉には、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故に加え、新たにウイルスの影が覆う被災地から巣立つ子供たちへのメッセージも込められていた。


福島県の公募枠で聖火ランナーに選ばれた阿部聖央さん(中央)。ふたば未来学園高校の卒業式後、仲間に囲まれ笑顔がはじけた=福島県広野町(芹沢伸生撮影)
福島県の公募枠で聖火ランナーに選ばれた阿部聖央さん(中央)。ふたば未来学園高校の卒業式後、仲間に囲まれ笑顔がはじけた=福島県広野町(芹沢伸生撮影)
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スポーツの力

 原発事故後、第1原発が立地する双葉町や大熊町、阿部さんが住む楢葉町などを含む双葉郡内は、ほとんどの地域に避難指示が出された。小学時代は県外で避難生活を送った阿部さんは昨年、高校2年のときに楢葉町へ戻った。かつて子供たちの声が響いた近所の公園は人けがなく、草が生え放題。避難先から戻らない町民も多く、近所づきあいはめっきり減った。

 寂しい思いを募らせていた阿部さんに前を向く力を与えてくれたのは、スポーツだった。

 いわき市で生活していた中学生のとき、福島県内の市町村対抗で毎年開催される駅伝大会「ふくしま駅伝」に楢葉町の代表として出場。普段は別々の場所に住む町民らとたすきをつないで県内94・8キロを走り抜け、「自分も町の一員なんだと実感できた」。

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