森雅子法相は11日の参院予算委員会で、東日本大震災の発生当初、勾留中の容疑者を検察官が「理由なく釈放した」などと語った9日の答弁を「個人の見解を申し上げた」として撤回した。主要野党は「検察官を愚弄した」(立憲民主党の蓮舫副代表)として納得せず、11日の予算委審議は途中で打ち切られた。ただ、この問題は民主党政権下で発生し、国会で追及を受けた江田五月元法相が謝罪した経緯もあり、与党からは「泥仕合」との批判も出ている。
福島地検いわき支部は、近くの東京電力福島第1原発事故などを受け、震災が発生した平成23年3月11日から同15日までの間に、勾留中の容疑者12人を処分保留で釈放。同16日以降、福島県いわき市の庁舎を閉鎖し、職員が同地検郡山支部に移った。
森氏は今月9日の参院予算委で「東日本大震災の時、検察官はいわき市から最初に逃げた」「身柄を拘束している十数人を理由なく釈放して逃げた」と発言していた。
野党側は「理由なく」「最初に逃げた」などの発言を問題視。蓮舫氏は記者団に、森氏が「わざわざ福島県を持ち出して自分の所管の検察官を愚弄した」と批判した。
森氏は同委で、「検察を所管する法相として、検察の活動について個人的見解を述べたのは不適切だった」と述べて答弁を撤回。菅義偉官房長官は11日の記者会見で「閣僚は国会で緊張感を持って対応してほしい」と指摘した。
しかし、当時釈放した容疑者の一部は再犯している。江田氏は平成23年4月26日の参院法務委で「被疑者(容疑者)の終局処分をしないまま釈放し、地域の皆さまに心配をかけたことは、率直におわびしなければならない」と答弁。検察官の郡山への移動も、平岡秀夫元法相は同年10月27日の同委で「避難」という言葉を使って説明している。