【大学最前線 この人に聞く】新型コロナ禍で読み解く日本・中国・米国と「世界のかたち」



新型コロナウイルス禍が日米中各国に与える影響について語る早大現代中国研究所長の青山瑠妙・早大大学院アジア太平洋研究科教授=東京都新宿区(松井英幸撮影)
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 パンデミック(世界的大流行)化とともに新型コロナウイルス禍は国境を越えて政治や経済、スポーツの場、そして人々の暮らしを揺るがせている。混迷の連鎖が広がるなか、“震源”である中国ではなにが起こり、習近平国家主席が指導する中国政府はなにを考えているのか。またわが国や米国をはじめとする西側民主主義国に有効な処方箋は-。中国外交研究の第一線に立つ青山瑠妙・早稲田大学現代中国研究所長に聞いた。(編集委員・関厚夫)

「習(集)権化」のわな

 「こと中国外交の方向性についていえば、新型コロナウイルス禍にかかわらず、不変といえましょう。なぜなら、これは習体制の硬直性がなせるわざといいますか、すべての政策について習氏が最終決断しないと前に進まないからです。言い換えれば、胡錦濤前政権までは外交にも影響を与えていた地方政府や各省庁、資源関係企業などの自主性、独立性といった分権のダイナミズムがほとんど失われています。こうした状況のなかでは、習氏自身が舵をとって方向を変えない限り、中国の対外政策が大きく変化することはありません。

 この『不変性』にはまた別の負の側面があります。新型コロナウイルス禍によって、訪日をはじめとする習氏の外遊日程がストップしてしまいました。集権化が進んでしまったがゆえに、中国の対外政策は習氏でないと展開も修正も非常に難しいなか、外国との政治交渉が滞ってしまい、経済面についていえば、外遊を利用して巨大プロジェクトを成立させる-といったことができなくなっています。

 また中国の対外政策に変化がないがゆえに、米中両国の対立の構図は新型コロナウイルス禍に関しても顕著になっています。本来ならば、『パンデミックとの闘い』は米中が協力できる分野です。実際、オバマ前政権ならば協力できたでしょう。ところが現状は非難合戦の観があります。たとえば米国側が『中国は新型コロナウイルスについてのデータを提供しない』と批判し、中国側は『米国は恐怖感をあおるばかりで非友好的だ』と応酬するといった具合です」

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