自民党の河井案里(あんり)参院議員(46)=広島選挙区=の陣営が、初当選した昨年7月の参院選で車上運動員に違法報酬を支払ったとされる公選法違反事件で、夫で前法相の克行衆院議員(57)=自民、広島3区=が選挙期間中、陣営スタッフに「期日前投票をお願いして」などと作戦を繰り返し指示していたことが20日、関係者への取材で分かった。指示は公示前から続いており、広島地検は克行氏が選挙戦を主導したとみて、違法報酬決定への関与も慎重に捜査している。
産経新聞が入手した無料通信アプリ「LINE(ライン)」の陣営内のグループのやりとりによると、克行氏は選挙終盤の昨年7月20日、投開票日に豪雨が予報されており、「投票率が上がらないと(支持基盤の少ない)河井あんりは不利」と指摘。スタッフらに「(豪雨前の)いまのうちに期日前投票をお願いしてください」と指示していた。
また公示前の6月には、克行氏がラインで秘書やスタッフに向け、「公示前の各地区『選対会議』開催日時を今日明日中に決めて報告してください」とも投稿。会議に参加した元陣営関係者によると、会議を主導したのは克行、案里両氏で、遊説ルートや集会場所、電話でのあいさつの方法など、選挙に向けた準備の詳細を地域ごとに決定したという。
ライン内では他にも「明日から三日間、毎日朝10時から夕刻五時半まで、事務所前で名刺配りをして」「(名刺の)用紙が固くてかさばり配りにくい」など、克行氏が詳細な指示や指摘を繰り返していた。
ある陣営関係者は「克行氏の指示がないと決められないことは多かった」と指摘。克行氏の政策秘書だった高谷真介容疑者(43)が実質的に事務を取り仕切っていたとし、「彼(高谷容疑者)が克行氏に報告していた」と語った。
地検は、車上運動員14人に法定上限の日当1万5千円を超える報酬を支払ったとして、公選法違反(買収)の疑いで高谷容疑者ら3人を逮捕。夫妻についても携帯電話などを押収し、複数回にわたり任意で事情を聴いている。