東京五輪延期にほくそ笑むロシア 薬物問題風化、処分緩和狙う





ロシア下院で演説するプーチン大統領=10日、モスクワ(タス=共同)

 【モスクワ=小野田雄一】東京五輪・パラリンピックの延期は、組織的ドーピング問題で大会から排除されることになっているロシアにとってはメリットとなる。薬物スキャンダルの風化が期待できるほか、延期される東京大会への代表団参加に向けた対策を講じる時間的猶予も得られたためだ。

 マティツィン露スポーツ相は24日、「延期の決定を尊重する」と評価。露オリンピック委員会のポズニャコフ会長も「理性的な決定だ」と歓迎し、各競技団体も理解を示した。いずれも選手や観客らの安全が最優先としているが、本音は別にある可能性がある。

 ロシアをめぐっては、世界反ドーピング機関(WADA)が昨年12月、ドーピング問題で代表団を主要大会から4年間排除する処分を決定。東京大会には潔白を証明できた選手のみ個人資格での参加が認められた。ロシアの異議申し立てを受けて今後、スポーツ仲裁裁判所(CAS)が決定の妥当性について裁定を下すが、決定が覆る可能性は極めて低い情勢だった。

 仮に大会が予定通り実施されれば、ドーピング問題が再び世界の注目を集め、ロシアはさらに評価を下げることが避けられない。しかし、延期でそうした事態はひとまず回避された。

 さらに東京大会までに下される見通しだったCASの裁定も延期で先延ばしされる可能性がある。ロシアはその間に自身に有利な状況をつくることが可能となった。

 実際、露政府は今年1月、ドーピング問題への関与が指摘された元スポーツ相のムトコ副首相を更迭。2月末に露陸上連盟の新会長に就任したユルチェンコ氏も「前体制下での不正」を認めた。CASの裁定を見据え、処分内容の緩和などを狙った措置とみられ、大会延期を奇貨としてロシアは今後もこうした動きを加速させる可能性がある。



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