中国、医療チームをカンボジアに派遣 親中政権に“見返り”





新型コロナウイルス感染拡大防止のため休校となった学校の前を通る仏教徒=18日、カンボジア(AP)

 【シンガポール=森浩】新型コロナウイルスの感染拡大が世界各地で続く中、中国政府が医療の専門家チームをカンボジアに派遣した。東アジアや東南アジアで初めて。カンボジアは新型コロナ流行を受けても中国支持の姿勢を鮮明にしており、優先的な専門家チーム派遣は親中フン・セン政権に対する中国の見返りという意味合いが強い。

 中国の専門家チームは23日、カンボジアの首都プノンペンの空港にマスクや検査キットなどの医療物資とともに到着し、モム・ブンヘーン保健相が出迎えた。

 「感染源の国」というイメージ払拭を狙う中国は、感染拡大が深刻なイタリアなど欧州に専門家チームを派遣したが、カンボジアの感染確認は26日までに98人で、他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国であるマレーシア(2031人確認)やシンガポール(683人確認)に比べ少なく、死者も出ていない。なぜカンボジアなのかという疑問は残る。

 カンボジアへの派遣について、中国外務省の耿爽(こうそう)報道官は23日の記者会見で、フン・セン首相が新型コロナ流行後に海外首脳として初めて北京を訪問したことに触れ、「未来を共有する鉄のような友情にふさわしいものだ」と発言。フン・セン首相が見せた支援の“見返り”であることを否定しなかった。中国は同じく親中的な姿勢を鮮明にするパキスタンへの専門家チーム派遣も検討している。

 フン・セン氏は、「困難な時期にこそ、両国の緊密な関係を強固にしたい」と繰り返し語り、中国支持を鮮明にする。中国に滞在する外交官や自国の留学生の帰国も「寄り添うべきだ」として認めなかった。イタリアやドイツ、米国などからの外国人の入国を禁止しつつ、中国には入国制限を設けていない。

 フン・セン氏の露骨な中国寄りの姿勢は、「外交的得点を獲得するのに(新型コロナ)発生を利用している」(米外交専門誌ディプロマット)と批判される。

 カンボジアでは中国が20億ドル(約2200億円)を支援した高速道路など、巨大経済圏構想「一帯一路」関連事業が次々と進む。フン・セン政権は野党陣営を弾圧し、批判を強める欧米諸国と対立を深めている。中国接近が今後も続くことは必至だ。

 野党陣営からは「フン・セン氏の政策は明らかにギャンブルだ。中国だけにかけ金を積み上げ続けるような現状は危険だ」と懸念する声が出ている。



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