【ワシントン=黒瀬悦成】米海軍横須賀基地(神奈川県横須賀市)に停泊中の米原子力空母「ロナルド・レーガン」の乗組員2人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたとFOXニュースが27日伝えたことで、中国の脅威をにらんでインド太平洋地域に展開中の空母2隻がともに事実上の行動不能となるという異例の事態に陥った。米海軍の即応能力と中国に対する抑止力の低下は避けられない。
横須賀基地のジャレット司令官は27日、「同基地所属の水兵2人が新型コロナに感染した」と発表した。同基地を母港とする空母レーガンの乗組員を指すとみられる。同基地では26日、米国から戻った水兵1人の感染が確認されている。基地司令部は向こう48時間にわたり基地を閉鎖することを決めた。
インド太平洋地域で作戦行動を実施していたもう一隻の原子力空母「セオドア・ルーズベルト」でも先週、複数の感染者が確認された。FOXニュースによると、ルーズベルトは日本時間27日朝、米領グアムの海軍基地に到着した。艦内の感染者は約30人に上り、いずれも軽症とされる。米海軍は乗組員約5000人のうち発熱症状などのある乗組員を中心に感染の有無を検査する。
アキリノ太平洋艦隊司令官が26日にAP通信に語ったところでは、ルーズベルトがいつグアムを出航できるかは未定。ハイテン統合参謀本部副議長は27日、一部記者団に「乗組員の検査は1週間以内に終わる」との見通しを示した。
ルーズベルトは乗組員の感染が見つかった当時、南シナ海での中国の覇権的行動を牽制(けんせい)する狙いからフィリピン海で演習を実施していた。
同艦およびレーガンが一時的に行動不能となったことに関し、専門家などの間では、中国の習近平体制がこれに乗じて南シナ海や台湾周辺で挑発行動を仕掛けてくることを懸念する声が強まっている。また、両空母に限らず、新型コロナ感染拡大の影響で艦船の修理や機材の調達に支障が出る恐れも指摘されている。
エスパー国防長官は27日、国防総省職員らに通達を出し、米国の敵対勢力が新型コロナへの対応に忙殺されている間に「危機に付け込んでくる可能性がある」と警告した上で「必要とあれば世界各地での安全保障態勢を修正することもためらわない」と強調。中国などの出方次第では逆に軍事的圧力をかけていく立場を示唆した。
国防総省によると、27日現在の米軍の感染者数は309人。うち29人が同日新たに感染が確認された。