北海道東部の太平洋沖で発生する津波予測を進めていた内閣府の有識者会議「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」が、最大約28メートルの津波が襲来し、市街地で最大14・5メートルの深さで浸水する可能性があるとの結果をまとめたことが29日、分かった。政府がこの地域で過去最大級の津波想定を出すのは初めて。内閣府は来年度から具体的な対策の検討に入る。
東日本の太平洋沖では、陸側プレート(岩板)の下に海側のプレートが潜り込んでおり、東日本大震災の震源を含む宮城沖から日高沖にかけての「日本海溝」と、十勝沖から根室沖に続く「千島海溝」がある。
検討会は過去6千年間に起きた津波による堆積物を分析するなどの手法で、発生する可能性がある最大規模の津波を予測した。その結果、北海道えりも町で27・9メートル▽釧路町27・3メートル▽広尾町26・1メートル▽釧路市20・7メートル-などと計算された。北方領土の択捉島では約29メートルと予想された。
地震発生から最大波が到達するまでの時間は、最短で浜中町の29分。根室市の花咲郵便局では34分後に浸水の深さが14・5メートル、釧路市の釧路駅では36分後に同5・8メートルと予想された。
北海道は平成24年、広尾町で最大35・1メートルなど30メートル超の津波が到達するなどとする独自予測を発表したが、調査の手法が異なるため、政府の予測はこれを下回った。
政府の地震調査委員会は最大クラスを想定した予測見直しで千島海溝ではマグニチュード(M)8・8程度以上が30年以内に7~40%以内で発生し、南海トラフ(M8~9級が70~80%)に次いで切迫性が高いと判断している。政府は北海道との協議を踏まえ、来月にも最終的な予測結果を公表し、具体的な対策を検討する検討会を設置する方針だ。