自民党の石破茂元幹事長が「次の首相」を問う世論調査で岸田文雄政調会長らライバルに差をつけている。とはいえ、後押ししているのは自民党総裁選の投票権を持たない野党支持層が目立ち、自民党議員には派閥の枠を超えて強固な“アンチ石破”が少なくない。(奥原慎平)
「自民党を1回出たから信用ならん。顔が怖い。『常に言うことが正論で、世の中はそんなものではない』というところもあるかもしれない」
石破氏は30日に都内の日本外国特派員協会で行った記者会見でこう述べ、党内で評価が高まらない理由を自己分析した。新型コロナウイルスをめぐる政府の対応について「中国からの入国制限はもっと早く行うべきだった」などと述べたが、一時は盛んだった安倍晋三首相への批判は抑制的だった。首相が2月末以降、計3回開いた記者会見についても「予定時間でおしまいではなく、進化は遂げつつある」と評価した。
余裕も感じさせる石破氏の自信の源は最近の世論調査だ。産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が21、22両日に行った合同世論調査で、石破氏は首相の18・8%をやや下回る18・5%で2位を確保。小泉進次郎環境相は9・8%、首相の「意中の人」とされる岸田氏は2・9%にとどまった。他の調査も似た傾向で、首相を除けば石破氏が抜きんでている。
しかし、調査結果を細かく分析すると実像は異なる。自民党支持層に限れば石破氏は19・7%で、首相の39・3%の半分程度。逆に石破氏には立憲民主党(21・9%)、共産党(35・9%)、れいわ新選組(39・4%)と野党支持層からの支持が高い。
自民党内には人付き合いが淡泊な石破氏を敬遠する議員が少なくない。平成24年の総裁選で石破氏を推した中堅は「会食に招待してもカラオケで1980年代のアイドルの曲を歌ってすぐに帰るだけ。ねぎらいもなく、顔すら向けない」と、リーダーとしての器量に疑問を呈する。
石破派関係者は「石破氏は世論調査の結果に自信を深めている。選挙地盤の弱い若手から支持が流れるだろう」ともくろむが、弱点とされる身内との交わりは相変わらず低調のようだ。