新作映画の公開が、相次ぎ延期になり、その数は2月以降、約60本に上っている。複数のスクリーンを有するシネマコンプレックス(シネコン)の一部が新作の不足を埋めるかのように過去の名画の上映を始めるなど、新型コロナウイルスの感染拡大が映画に与える影響は大きくなる一方だ。(石井健)
直近では米ソニー・ピクチャーズが「ピーターラビット2/バーナバスの誘惑」「ゴーストバスターズ/アフターライフ」「モービウス」について、米国での公開を夏休みから年明け以降に延期すると発表。日本公開は未定だ。また、トム・クルーズ主演の「トップガン」の34年ぶりの続編「マーヴェリック」も米国での公開を年末に先送りし、日本の公開日は決まっていない。
洋画はディズニーが3月2日に「2分の1の魔法」の日本での公開延期を決めた後、「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」「ブラック・ウィドウ」「ワンダーウーマン 1984」など話題作が続々と公開延期となった。
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邦画は2月28日に「映画ドラえもん のび太の新恐竜」など春休みの家族向け映画が延期を決めた後も予定通りの公開が続いたが、今月3日に東宝がアニメーションの人気シリーズ「名探偵コナン 緋色の弾丸」と「映画クレヨンしんちゃん 激突!ラクガキングダムとほぼ四人の勇者」に加え、中島みゆきの人気曲をモチーフに菅田将暉と小松菜奈が共演する「糸」と長澤まさみ主演のヒットシリーズ「コンフィデンスマンJP プリンセス編」の公開延期を発表。
7日には岡田准一、柴咲コウ、鈴木亮平らが出演する「燃えよ剣」の公開延期も発表された。
「東京都の要請に応じて東京圏の多くの映画館が休館した3月28、29日の興行成績を見た映画配給各社が『公開しても厳しい』と判断し、一気に延期に傾いたのでは」と映画関係者はいう。別の関係者は「映画の興行収入(興収)の半分は東京圏の映画館が占め、公開最初の週末だけで25%を稼いでいる。東京圏の映画館が週末に休む影響はあまりにも大きい」と指摘する。
シネコンのTOHOシネマズは7日、3月の興収を発表したが、約26億円で前年より58・8%減と大きく落ち込んだ。
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一部のシネコンは、延期で空いたスクリーンを埋めるかのように名画の上映を始めた。これは3月26日で終了した企画上映「午前十時の映画祭」を急遽(きゅうきょ)、拡大延長したもので、ラインアップは「ローマの休日」「サウンド・オブ・ミュージック」「ウエスト・サイド物語」「JAWS/ジョーズ」「E.T.」など。SNSでは、「シネコンが名画座になった」と話題になった。
一方、米ユニバーサル・ピクチャーズは「延期よりも家庭で手軽に見られる選択肢を」と、一部の作品について米国内でのオンライン配信に踏み切った。映画関係者からは「映画興行のあり方が変わるかもしれない」という声も出ている。