埼玉県は15日、無症状や軽症の新型コロナウイルス感染者について、県が借りたホテルへの移送を始めた。軽症者らを入院先の医療機関から移すことで、重症者向けの病床を確保することが狙いだ。ただ、今後も感染者が増え続ければ、さらに複数のホテルを押さえなければならず、病床不足の根本的な打開策は見いだせていない。
この日は、医療機関から入院の必要がないと診断された10人が、県が確保したアパホテルさいたま新都心駅北(さいたま市大宮区、223室)に移った。
マイクロバスで到着した患者たちは、防護服を着た県職員らに付き添われてホテルに入った。看護師2人が24時間態勢で常駐して患者の体調管理にあたるほか、担当の県職員も配置する。
県がホテルの確保に踏み切った背景には病床不足の深刻さがあった。
県内の新型コロナウイルス感染者は455人(14日午後7時現在)で、このうち自宅待機を強いられている人は207人(同日午後5時現在)に達している。県は当初、感染者全員を入院させる方針を示していたが、想定を上回る感染者増加で入院先の調整が追いつかなくなり、待機者が相次いでいるのが実相だ。
現在、県が患者向けに確保している病床数は225床にとどまる。ホテルを確保したことでひとまず収容の見通しは立ったものの、今後も感染者が増え続ける公算は大きい。
大野元裕知事は14日の記者会見で、専門家が示した試算として、県内の累計感染者数が大型連休(GW)明けに1000人に達するとの見通しを明らかにした。この試算が現実のものとなった場合、病床不足は現状とは比較にならないほど深刻さを増し、医療崩壊が現実味を帯びる。
県は、軽症者らを収容するホテルをさらに確保するため、複数の業者と交渉しているが、調整は難航している。県保健医療政策課によると、ホテルを借りる場合、医師や看護師への感染を避けるために施設内を「清潔区域」と「汚染区域」に区分できることが前提となるため、施設選定のハードルは高い。東京都や神奈川県に比べて県内のホテルの数が少ないことも、確保の難しさに拍車をかけている。
(竹之内秀介)