「停止状態」に陥った中国経済 世界経済悪化が回復シナリオにも影響





北京市内では大企業を中心に操業再開が進む一方で、飲食や観光など小規模企業では苦境が続いている=8日、北京(ロイター)

 【北京=三塚聖平】中国の2020年1~3月期の国内総生産(GDP)は6・8%減と、四半期ベースで初のマイナス成長となった。湖北省武漢市から広がった新型コロナウイルスの影響で、1月下旬から2月にかけて「停止状態」に陥ったためだ。中国政府は企業活動の再開を急ぐが、各国の感染拡大による世界経済の悪化懸念が浮上。中国の景気回復シナリオに早くも狂いが生じている。

 「春節(旧正月)休暇後に営業を再開します」

 北京市内では、今もこのような張り紙をしたままシャッターを閉ざした店が少なくない。大企業を中心に操業再開が進む一方で、飲食や観光など小規模企業では苦境が続いている。

 1月25日の春節直前の20日に、習近平国家主席が新型コロナの感染阻止を指示。中国経済はマヒ状態に陥った。3月に入ってからは「国内での感染流行のピークは過ぎた」として企業再開に重点を移している。

 だが、中国経済は足元で2つのリスクに直面する。第1は、海外からの感染者の流入や、無症状感染者による「感染第2波」の懸念だ。一部で厳しい防疫措置が残り、経済活動のアクセルを強く踏み込めずにいる。第2は世界経済の悪化だ。輸出企業が多い広東省では既に「感染拡大で景気が悪化した海外から発注のキャンセルが出ている」(日系企業関係者)。

 経済悪化は習政権の信任にも関わるため警戒感が増している。13年ぶりに特別国債を発行する方針を決め、近く包括的な景気刺激策が表明されると予想される。ただ、国家予算を承認する全国人民代表大会(全人代)の日程は未定で、今年の成長目標が示されない可能性も取り沙汰される。

 08年のリーマン・ショック直後に4兆元(当時のレートで約57兆円)の大型景気対策を打ち出した中国は、過剰債務問題などの副作用に今も苦しむ。日本総合研究所の関辰一・主任研究員は「中国政府は銀行融資や公共投資の急拡大に対して慎重姿勢を示している。リーマン・ショック時のように世界経済の回復に大きく貢献することは期待薄だ」と指摘する。



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