全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス社長の片野坂真哉さん(64)は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う渡航制限などで飛行機の利用客が激減する中、対応に奔走しています。そういう状況にあっても、新聞記事のスクラップは続けているそうです。「気に入った文章を書き留めておくこと」を呼びかけています。
◆入試目的に
社長になってから、新聞のスクラップを続けています。気に入った記事を切り抜いてファイルに入れるようにしています。新聞はいつも役に立っていますよ。新聞の記事は整理して書いてある第一級の文章ですよ。
僕は毎日、株価と為替と金利と原油価格は手で書いて記録しています。株価が下がったり悪いことがあったりすると「赤」、良い話題は「黒」で書き留めています。新型コロナの影響で3月からは、赤で書くことばかりになってしまった。
新聞をよく読むようになったのは、中学や高校のころだったんですが、動機は不純でした。「入試に出るから」といわれて。実際に東京大の入試には朝日新聞の「天声人語」などが出ていたんです。ただ、小学校のころから親から社説を読めとか言われていました。「意味は分からなくても読んでいたらいいんだ」と言われていましたけどね。
◆選ぶのは読者
新聞の良さというのは、全てが入っているということなんです。社会面、経済面、外信面、文化面、囲碁や将棋、運動も。一方、ネットのニュースサイトは、発信者が選んだものを送ってきている。この違いは大きい。私の好きな言葉で「We report. You decide.」(われわれは報道する。判断するのはあなた)という言葉があります。あれは、多分、「We report All. You choose(われわれは全て伝える。選ぶのはあなた)」ということだと思うんですよ。