作家・山田風太郎がまだ医学生だった昭和20年、戦争末期の日々をつづった日記を漫画化した作品。国の行く末を憂う一方で、腹は減るし酒は飲みたい。空襲警報が鳴ってもとりあえず学校へ向かい、数学の試験が中止になると「萬歳(ばんざい)」と狂喜する。漫画になったことで、当時のささやかな喜びや、間近に迫る死の恐怖がより切実に伝わる。
空襲にさえ徐々に慣れていった当時の人々。喫茶店などが姿を変えた「雑炊食堂」に並ぶ様子など、マスクを求めて行列する現代人の姿に通じるところも多い。今こそ読みたい漫画だ。(勝田文漫画、山田風太郎原作、講談社・640円+税)