わずか10年で腐食、千葉県匝瑳市の津波避難タワー使用不能に – 地域住民に広がる不安と課題

太平洋沿岸に位置する千葉県匝瑳市今泉浜地区の津波避難タワーが、2015年の完成からわずか10年で深刻な腐食により使用不能に陥っています。地域住民や頻繁にこの地を訪れるサーファーからは、非常時の避難手段の喪失に対する困惑と不安の声が上がっており、建て替えの時期も予算の関係から不透明な状況です。

早期使用不能に住民とサーファーから困惑の声

千葉県匝瑳市今泉浜地区の津波避難タワー、深刻な腐食で使用不能千葉県匝瑳市今泉浜地区の津波避難タワー、深刻な腐食で使用不能

今泉海水浴場から直線距離で約400メートル、徒歩7分ほどの場所に立つこの津波避難タワーは、「危険ですので立ち入らないでください」と赤文字で警告する看板が掲げられ、周囲はロープで封鎖されています。タワーの柱や手すりには激しいさびが進行し、その下には鉄くずが散乱しているのが見て取れます。

八街市からサーフィンに訪れる60代の男性高校教諭は、タワーが使用できないことを知り、驚きを隠せない様子で「サーフィン中は津波警報に気づかないこともある。近くに避難場所がないと非常に不安だ」と語りました。

近隣住民の間でも困惑が広がっています。76歳の自営業の男性は、「こんなに早く駄目になってしまうとは、あまりにもひどく、ただただ驚いている」と話します。風で飛散するさびが自宅の車にも被害を及ぼしているといい、「なぜすぐにさびるようなタワーを建てたのか」と、その設計と建設品質に疑問を呈しています。

計画と現実の乖離:想定外の腐食進行

今泉浜津波避難タワーの場所を示す地図今泉浜津波避難タワーの場所を示す地図

千葉県が元禄地震(1703年)を基に行ったシミュレーションによれば、今泉浜地区付近には36分で津波が到達し、最大で7.8メートルの高さになると想定されています。東日本大震災で深刻な津波被害を受けた経験から、匝瑳市は国の復興交付金を活用し、総額7830万円を投じて2015年にこの津波避難タワーを完成させました。

タワーは、高さ6.2メートルと8.7メートルの2か所に避難足場があり、最大150人が収容可能です。夜間照明用の太陽光パネルや蓄電池も整備され、塩害対策として腐食に強いとされる塗装も施されていました。市は建材の法定耐用年数に基づき、タワーの耐用年数を31年と見積もっていました。

しかし、市総務課によると、完成当初からさびの進行が速かったといいます。年に一度の点検とさび止め塗装を継続してきましたが、2023年の調査で手すりの安全性に問題があると判断され、結果として2024年に使用中止の措置が取られました。想定された耐用年数の半分以下で機能停止に至ったことは、計画と現実の間に大きな乖離があったことを示しています。

建て替えの行方と今後の課題

津波避難タワーの使用中止は、地域の防災体制に大きな穴を開けることになります。住民やサーファーが抱える不安は解消されておらず、代替の避難場所の確保や、新たなタワーの建設が急務となっています。しかし、現時点では予算の関係から建て替えの具体的な時期は不透明であり、市は頭を悩ませています。

この事態は、海岸沿いの公共インフラ、特に防災施設の設計、建設、維持管理において、塩害対策の重要性を改めて浮き彫りにしています。将来を見据えた、より堅牢で持続可能な施設の実現に向けた根本的な見直しが求められており、地域住民の安全確保のためにも、早急な対策と透明性のある情報公開が期待されます。

参考文献