日々の暮らしを快適にする家財や家電はあまたあれど、親しみを込めて「愛」とつけるのは自動車ぐらいだろう。生活の足であり、趣味の対象にもなる相棒。その愛車が未来の社会をどう変化させていけるのか、トヨタ自動車の考えを「トヨタイムズ」は広告の形をしたひとつのメディアとして伝えている。
広告と広報を融合させた自社媒体の活用は、5年ほど前から産業界に広がった。新聞広告やテレビCM、インターネット上にトヨタイムズの真っ赤な太文字が躍ったのは昨年1月。同社の内側を見せる、をコンセプトに俳優の香川照之さん(54)が編集長となって取材し、第三者の視点で豊田章男社長の生の言葉や同社を支える若い技術者、テストドライバーらの思いを引き出している。
自動車業界を取り巻く変化は激しい。同社でも電動化やAI(人工知能)、あらゆるものがインターネットにつながるIoT技術の開発などを加速させ、異業種との資本・業務提携も進む。トヨタイムズ編集部副編集長の北沢重久さんは「企業規模が拡大する一方で、会社の方向性を多くの関係者と共有することが難しくなっていた」と明かす。
受賞広告に登場する「クルマを作る会社ではなく、モビリティーカンパニーになる」という豊田社長の言葉は印象深い。トヨタイムズを通じてトヨタの“イズム(流儀)”をさらけ出し、一枚岩になって新しい時代を切り開く覚悟だ。