財務省が20日発表した3月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、世界全体への輸出額は6兆3579億円と前年同月比11・7%の大幅減となった。自動車の米国向け輸出などが低迷したのが要因。下げ幅は、英国の欧州連合(EU)離脱問題など海外経済の不透明感から円高が進んだ平成28年7月以来、3年8カ月ぶりの大きさだった。新型コロナウイルスの感染拡大による貿易の停滞が鮮明となり、影響の長期化が懸念されている。
米国向け輸出は、16・5%減の1兆1821億円で、東日本大震災直後の23年4月(23・3%減)以来の減少幅だった。品目別では自動車や航空機エンジンなどが落ち込んだ。
EU向けも11・1%減。自動車や金属加工機械が落ち込んだ。
中国向けは8・7%減。自動車部品や半導体製造装置などが落ち込み、2月(0・4%)から減少幅が大きく拡大した。
全体の輸入額は5・0%減の6兆3529億円。輸出から輸入を差し引いた貿易収支は49億円で2カ月連続の黒字だった。オーストラリアからの石炭などが減ったことが要因だ。一方、中国からの輸入は4・5%減で2月(47・1%減)と比べ減少幅が縮小。中国国内の経済活動が一部再開されたことが反映された。
日本の最大の輸出先である米国が国家非常事態宣言を出したのは3月13日で、4月以降の貿易額はさらに落ち込む可能性がある。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「世界的に貿易量が大きく収縮した状態はしばらく続く」と分析している。
同時に発表した令和元年度の貿易収支は1兆2912億円の赤字だった。赤字幅は前年度から19・8%縮小した。輸出は6・0%減の75兆8800億円で、輸入が6・3%減の77兆1713億円だった。輸出入とも3年ぶりに減少した。