平成17年のJR福知山線脱線事故で重傷を負った玉置富美子さん(70)=兵庫県伊丹市。この15年間は、痛みとの闘いだった。後遺症の手術はもう20回以上。今も週3回のリハビリが欠かせない。だが苦痛の中にいるからこそ、何げない日常の大切さを知っている。今年は新型コロナウイルスの影響で追悼行事も中止になるなど、だれもが“非日常”を生きる。玉置さんは「5月になり落ち着けば、現場で手を合わせたい」と願っている。(藤木祥平、写真も)
「もう手術を何回したか数えるのもいやになった」
事故当時、3両目に乗っていた玉置さんは衝撃で車外に投げ出された。右頭部から右頬までの皮膚が裂け、左足を大きく損傷。一時心停止し、文字通り生死の淵をさまよった。
後遺症で右の目や口を動かす筋肉が機能しなくなった。顔の皮膚が垂れ下がり、目や肩が痛み出す。これを引き上げるため手術を受けるが、時間がたつとまた垂れてくる。この繰り返しだ。
手術は何度受けても慣れることはない。激痛を伴う麻酔針が挿入される瞬間、「来なければよかった」と後悔するという。終わった直後から、次の手術のプレッシャーが始まるのだ。