【記事のポイント】
・プーチン体制下で育ったロシアの若者層に反政権機運が高まっている
・拘束リスクも顧みずに反政権デモに参加し、社会の変革を要求
・プーチン大統領の“功績”の未体験、インターネットの発達も背景に
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ロシアのプーチン大統領は5月7日、最初の大統領就任から20年の節目を迎えた。強権的な統治手法を用いつつも、ソ連崩壊に続く1990年代の混乱を収束させ、政治、経済、軍事でロシアを再興させた「救世主」とみなされ、安定した支持を保ってきた。しかしロシアでは今、プーチン流の統治に拒否感を抱き、拘束されるリスクも顧みず反政権デモに参加する若者が増えている。こうした若者層はなぜ形成され、何を望んでいるのか-。現体制下で育った“プーチンの子供たち”の実情を追った。
「プーチンなきロシアを!」「(プーチン体制の永続化を可能にする)憲法改正に反対!」
新型コロナウイルスの感染拡大で外出制限が取られる前の2月29日、モスクワ中心部で2時間にわたり、こうしたシュプレヒコールが響き渡った。プーチン体制の批判者で、2015年に同市の路上で射殺されたネムツォフ元第1副首相の追悼デモの一場面だ。
デモは市当局の許可の下で開かれ、民間集計団体によると、約2万2千人が参加した。同氏殺害事件では実行犯らが検挙されたが、支持者側は「政権周辺が殺害を命じた可能性がある」と主張。追悼デモを毎年開き、再捜査を求めてきた。政権側は反政権的なデモの実施を許可しないことが多いが、同氏の追悼デモは“ガス抜き”のため許可しているとみられている。
ただ、この日のデモは例年とは少し様子が違った。参加者が昨年から1万人以上増えた上、若者の姿が目立っていたのだ。「性的少数者の迫害をやめろ」「インターネットを規制するな」などと、追悼と直接関係のないスローガンも掲げられ、露メディアは「デモは(政権側が抑圧する)リベラル的主張の見本市の様相を呈した」と報じた。