【ワシントン=黒瀬悦成】南米ベネズエラからの報道によると、反米左翼のマドゥロ大統領は6日、政権転覆を目的に同国北部の海岸から上陸を試みた武装集団17人を拘束し、その中に米国人2人がいたことを明らかにした。米国人の1人は国営テレビの映像で「首都カラカス近郊の国際空港を制圧してマドゥロ氏を拘束し、空路で米国に連行する計画だった」と証言。マドゥロ氏は「計画の直接の首謀者はトランプ大統領だ」と主張し、2人を国内で裁判にかける方針を明らかにした。
マドゥロ政権の発表では、ベネズエラ北部の海岸に3日未明、何者かに雇われた数百人の武装集団が上陸を図ったが、治安当局が8人を殺害して撃退し、武器などを押収した。
国営テレビの映像によると、証言した拘束男性は34歳の元米海兵隊員。米国人2人は米南部フロリダ州の民間警備会社「シルバーコープUSA」と契約し、1月からコロンビア北部のベネズエラとの国境地帯で60~70人のベネズエラ人を訓練していたと語った。
シルバーコープは米陸軍特殊部隊グリーンベレー元隊員のジョーダン・グドロー氏が経営。AP通信によると同氏は人心掌握術や射撃、格闘術に長け、イラクとアフガニスタンでの戦闘での戦勲を評価され、銅星章を3回受章した。
グドロー氏は、ベネズエラの野党勢力を率いるグアイド国会議長との間でマドゥロ政権を転覆させる契約を交わしたと明かしているが、グアイド氏は契約の存在を否定している。
これに対し、ポンペオ米国務長官は6日の記者会見で「米政府は作戦に直接関与していない」と否定し、拘束された米国人について「あらゆる手段を使って帰国させる」と強調した。
AP通信の取材によれば、米政府が計画に関与した形跡は見つかっていない。しかしマドゥロ政権は、ケネディ米政権下の1961年、在米亡命キューバ人の民兵部隊がキューバに上陸し、反米カストロ政権の転覆を図って失敗した「ピッグス湾事件」と同様、背後で中央情報局(CIA)が暗躍していると主張しているという。